不定期に更新するコラム・・・2

良いデザインを守り、残すこともデザイン

徳山市章のルーツを発見

マンホール.jpg周南市内のマンホール これは過去に、周南市内の某病院のリニューアルに関するプロポーザルコンペに参加し、残念ながら落選となったけれども、自分としてはデザインを創る過程が非常に楽しかったので印象に残っている案件です。
 右のマンホールの中央に配置されているマークが、旧徳山市の市章です。
今でも周南市内のほとんどのマンホールが未だに旧徳山市の市章の入ったマンホールのままです。
世の中にはありとあらゆるシンボルマークが氾濫し、シンボルマークに関しては、もう「新しい」デザインというのは存在しないと言い切っても良いと思います。
実際に、数年前に平成の大合併で全国に新市が誕生し、どこも新市の市章を判で押したように全国公募し、そこにまた判で押したような「流行の」市章が誕生しました。私も山口県内の新市の市章のデザインの審査員を数件経験し、決定したデザインの類似調査をしましたが、もう気が遠くなるような作業で、世の中には商標登録という制度があり、類似したマークは使用出来ないことになっています。しかし既にシンボルマークに関しては、数万、数十万件の商標が登録してあって、知らずに創ったとはいえ、何かに似ていないということは有り得ないのです。
 そういう現状を知ってしまうと、新しいモノを創る行為も意味がありますが、良いデザインだけど捨てられる運命にあるデザインを残すことにも意義があると思うのです。旧徳山市の市章は個人的には大変好きなデザインでした。しかしながら合併によってお役御免となりました。数十年間徳山市のシンボルとして輝いて来た市章が世の中から抹消されたのです。これを復活させることがコンセプトでした。

拡大.jpg  昭和28年の市広報の一部 おそらく旧徳山市の市章のデザインのルーツを知っている人は、今の周南市にはいないと思います。ここにたどり着くまでに相当の時間がかかりましたが、図書館を隅から隅まで探して、当時の市広報を見つけました!
当時も市章は全国公募で決定したという事実、今の手法と何ら変わっていない。これが良いのか悪いのか…
でもここまで調べ上げて、なおさらこの市章のデザインは何らかの形で残していくべきだと思いました。
当然知的所有権も消滅していますので、使うことに問題はありません。
当時はパソコンなんか当然無いのでデザイン、いや当時は「図案」と呼んでいたモノは手描きです。旧徳山市の市章の様なシンメトリカルな図案は計算で描かれていたんだ〜、なんか感動しました。
 そこで、残す為のデザイン作業(リ・デザイン)は当時の手法で「計算式」でアナログ的に行いました。
スクリーンショット(2011-01-07 21.10.33).png  デザインのアートワーク
ロゴタイプも徹底的に計算式でアナログ的にデザイン。
今回、病院という公共性のある施設(しかも名前に徳山が入っている)のシンボルマークのコンペだったので、旧市章でも似合うと踏んだのですが、ちょっと提案的には刺激が強すぎたようでした。
でも私はこの旧徳山市の市章のデザインは、今だからこそ、こんなにシンプルで力強く潔いカタチの方が存在感があると感じます。
 多分、またどこかで提案するでしょう。

不定期に更新するコラム・・・1

デザインの領域

徳山巨峰ワインリニューアルプロジェクト(LLP周南デザインネットワーク)

展示用.jpg   SUGANE徳山巨峰2009徳山巨峰ワインといえば、20年以上前に須金(すがね)地区の巨峰ぶどうを使ったロゼワインとして開発され、毎年発売されている周南市の特産品です。
最近は安い輸入ワインが大量に輸入され、この徳山巨峰ワインの売上げが芳しくないということで、デザインのリニューアルのご相談を受け、このプロジェクトがスタートしました。
須金ぶどう・梨生産組合の方がこのワイン用のぶどうを育てる為にどれだけ苦労されているか、またワインの最終行程であるサッポロワイナリーでの製造行程をトータルしたワインの製造原価から試算される価格設定の実情など、まずはワインというものを知ることから始まりました。
LLP周南デザインネットワークのメンバー達と、マーケティングリサーチや広島、島根、福岡等のワイナリーにも調査に出向き、地元のぶどうを使ったワインの試飲、ラベル等のデザインの検証など、あらゆる事前準備をした上で、この徳山巨峰ワインのリニューアルのコンセプトが固まりました。
・ぶどうの産地である須金を全面に出したデザイン及びネーミング
・高級ワインにふさわしいパッケージデザイン
・須金ぶどう生産組合の方々の苦労が伝わるような演出
プレゼン.jpgラベルデザインのプレゼン風景ラベルはワインの顔なので、もっとも須金を象徴している風景(ロケーション)を須金地区隅々まで歩いてこの赤い鉄橋に決定、ちょうどロゼワインの色にも連想するような情緒ある橋です。この段階では、須金のぶどう生産組合の方々や、行政の担当部署とも十分に意見交換をしてデザインの方向性をプレゼンしました。
ネーミングは、SUGANEと表記して「シュガーネ」と読ませます。
このワインは贈答用にも用いられるので、1本ごとにカートンに入れられ、カートンには須金の歴史や、巨峰ワインが出来上がるまでの行程が克明に記されています。ワインのパッケージとしては、従来のイメージを打ち破ったものができ上がりました。
このように、ワインのパッケージひとつリニューアルするにも、完成するまでには約半年をかけましたが、本当はカートンの形状やボトルの形状、もっと言えばワインそのものの味に関してもデザイナーの声を反映することができればもっと良いモノが出来ると確信しています。
ちなみにこのSUGANE徳山巨峰2009は、出荷ベースでは発売直後に完売しました。

LLP周南デザインネットワーク=2009年8月に、周南市内の有志5名によってLLP(有限責任事業組合)を設立したデザインユニット。“周南発の新しい質の高いデザイン”を生み出す為に周南市の活性化・街づくりに貢献する活動を展開中。

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